図解でわかるフレミングの右手の法則!指の向きと発電の仕組みを徹底比較【完全版】
ここで一歩踏み込んで、なぜ電磁気学にはこれほどまでに「右手」と「左手」のルールが混在しているのか、その歴史的な背景を見ていきましょう。前出の橋本省二氏による考察(gendai.media)でも指摘されているように、中学理科で誰もが習う「フレミングの左手の法則」は、実は「右手の法則」になっていても決しておかしくはありませんでした。
その鍵を握るのが、電流の周囲に発生する磁界の向きを定義した「アンペールの右ねじの法則」と、空間座標の取り方です。物理学や数学の世界では、3次元の座標軸(X軸・Y軸・Z軸)を定義する際、国際的な標準として「右手系(右手の親指・人差し指・中指の並び)」を採用します。高校の物理や大学の電磁気学に進むと、電流が磁場から受ける力(ローレンツ力やアンペール力)は「外積」という数学のルールで計算されますが、この外積の向きは本来右手で定義されるものです。
では、なぜモーターの法則は「左手」になったのでしょうか。それは、フレミングが当時の技術者や学生にわかりやすく教えるため、3本の指に割り当てる順番を「親指=Motion(動き・力)、人差し指=Field(磁界)、中指=Current(電流)」という英語の頭文字や語呂に固定したことに起因します。もし「人差し指に電流、中指に磁界、親指に力」という割り当て方を採用していれば、モーターの動く向きも右手だけで完全に説明できていたのです。
実際、現在の日本の教育カリキュラムでも興味深いねじれが起きています。中学理科の教科書では「フレミングの左手の法則」は大きく図解で登場しますが、実はフレミングの右手の法則という名称自体は、現在の多くの中学校教科書では発展扱い、あるいは記載すらされていません。その代わり、高校物理の「物理基礎・物理」に進んだ段階で、レンツの法則やローレンツ力の考え方と合わせて本格的に登場します。逆に欧米の教育現場では、左手の法則と右手の法則の混同を避けるため、最初から「右手の手のひらルール(Right-hand palm rule)」ひとつに統一して教えるケースも増えています。