ワン・ダイレクションから現在へ!What Makes You Beautifulの軌跡
なぜ『What Makes You Beautiful』はここまで長く愛されるのか。その理由は、作詞・作曲を手掛けたサヴァン・コテチャの実体験に基づく歌詞(リリック)の心理的アプローチにあります。
コテチャは当時の音楽メディアの取材に対し、「ロンドンのホテルの部屋で、妻が『今日は自分の見た目が最悪だわ』と鏡の前で落ち込んでいた。僕は彼女に『君が自分の美しさに気づいていないこと、その謙虚さこそが君を美しくしているんだ』と伝えた。その瞬間にサビのフレーズが浮かんだ」と明かしています。
サビの核となるフレーズ「You don't know you're beautiful, that's what makes you beautiful(君は自分が綺麗だって気づいていない、まさにそこが君を美しくしているんだ)」は、外見至上主義やSNSでの自己顕示欲に疲弊し始めていた2010年代初頭のティーンエイジャーの自己肯定感を強く支えました。
黄金期の5人によるパート分けの妙
原曲における3分18秒のパート分けは、メンバーそれぞれの声質と役割が緻密に計算されています。
- リアム・ペイン(1番Aメロ・2番Aメロ前半):正確無比なピッチと安定した中低音を持つリアムが、冒頭の「You're insecure, don't know what for(君は自信がないんだね、どうしてだろう)」から楽曲の土台をしっかりと築きます。
- ゼイン・マリク(1番Bメロ・サビのハイノート):Bメロの「Everyone else in the room can see it」を担当し、R&Bテイストの甘い歌声でサビへの期待感を一気に高めます。
- ハリー・スタイルズ(サビのソロ・落ちサビ):ハスキーで色気のある声質を持つハリーが、サビの「You don't know you're beautiful」の決めフレーズと、曲終盤のアカペラに近い落ちサビ(「Baby, you light up my world like nobody else〜」)を独占し、楽曲の顔としての印象を決定づけました。
- ルイ・トムリンソン&ナイル・ホーラン(2番Aメロ後半・コーラス):2番の「So c-come on, you got it wrong」のパートを分け合い、MVでも2人が肩を組んでマイクに向かうシーンが象徴的に描かれています。
ギター初心者でも弾ける「3コード」の魔法
楽器演奏の観点から見ても、この曲は極めてシンプルかつ強力です。ギターのコード進行は、基本的にキーがEメジャー(ホ長調)で、「E → A → B」のわずか3つの基本コード(スリーコード)の繰り返しだけで曲の大半が構成されています(一部サビやブリッジでC#mが加わるのみ)。
ロックンロールの古典的名曲(リッチー・ヴァレンスの『La Bamba』やザ・ビートルズの『Twist and Shout』)と同じ「I - IV - V」の王道コード進行を採用しているため、一度聴いたら耳から離れないキャッチーさが生まれ、かつ軽音楽部やアコースティックギター初心者が最初に練習する課題曲としても絶大な支持を集めています。